目次
わんちゃんのしつけはルールを守らせることから
人間を含む動物界には独自のルールがあり、そのルールが守られることで秩序が保たれていますね。
わんちゃんのしつけというのは、人間とわんちゃんが、人間の住む社会の中で快適に暮らしていくための独自ルールです。
「おすわり」や「お手」などの芸を教えることとは違います。
基本的には、親が自分の子どもにしつけをするのとほぼ同じ。
大脳が単純で、人間よりも感情が複雑でない分、しつけはしやすいのです。
わんちゃんはほめて伸びる子?
しつけの基本は、「ほめること」と「しかること」の2つです。
上手にできたらまずほめます。
悪いことをした瞬間に「ダメ」と行動を中断し、止めたらその止めたことに対してほめる、という具合に。
何が悪いか教えずに、ガミガミといつまでもしかっては、わんちゃんはなんでしかられているのかわからずにストレスを抱えてしまします。
ほめ方の方法は3つ
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- なでる
「よーし!」や「Good!」などのほめ言葉を決めておき、1回だけなでます。
「よーしよーし」となで回してあげたほうが愛情が伝わるような気がしますが、あまり何度もなでてしまうと、なでられるのに慣れてしまったり、わんちゃんがうれしくて集中力がなくなったりすることがあるので、しつけとしては簡潔にします。
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- おやつ
ごほうびとしてわんちゃんの好物のおやつを少量あげます。なるべくカロリーの低いものだといいですね。
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- おもちゃ
わんちゃんはおもちゃが大好きなので、おもちゃはごほうびになるのです。前もって何種類かのおもちゃをあたえておき、その中から一番のお気に入りをチェックしておき、ほめてあげたい時にあたえると大喜びです。
おやつやおもちゃに関しては、いつもあたえていると飽きてごほうびではなくなってしまいます。なので、だんだんできるようになったら、最終的にはほめ言葉だけにします。
トイレのしつけ
人間の赤ちゃんはおむつが外れるまではおむつに排泄をしますが、わんちゃんは本能的にきれい好きでトイレにこだわりがあり、自分が寝る場所では絶対に排泄しません。
ですから、新しいわんちゃんを迎えたらすぐに、寝床とは少し離した位置にトイレの場所を決めてあげましょう。
トイレのしつけは、わんちゃんの生理的な特徴を利用するのがポイント。
わんちゃんは、①寝起き ②食後 ③遊びのあと に排泄したくなる傾向があるので、
そのタイミングに合わせてトイレのある場所に連れて行きます。
わんちゃんをよーく観察していると尿意や便意のサインが見えてきます。
そわそわ落ち着きがなくなったり、後ろ足の動きがぎこちなくなったり、
自分のお尻を気にしたりと、わんちゃんによってまちまちですが、
この前兆を見逃さずトイレへGO。
そして決められた場所でトイレができたら、「いいコ!」とほめます。
おやつのごほうびをあげてもOK。この場所で用を足すとごほうびがもらえることを記憶させると、すすんで所定の場所でトイレをするようになります。
トイレの回数
1日に行くトイレの回数は、
子犬で、食事の回数+2~4回
成犬で、食事の回数+1回
が目安です。
ただこれも個体差があり、1日に2~3回、反対に10回以上のわんちゃんもいるようです。
1回の量もたっぷりだったり、少量だったりとばらつきがあります。
食事のしつけ
食べものが目の前にある時でも、自主的に「まて」の状態になり、「よしっ」の合図があって食べるようになるのが理想です。
そうでないと、拾い食いをしてしまい何か腐ったものや食品でないものを口にしてしまったら大変です。
やり方は、まず食器はやさしく声をかけながら置きます。
わんちゃんのおしりを軽くおさえて「おすわり」をさせ完全に静止させます。
そして「よし」の声で食べはじめるようにします。これを根気よく繰り返します。
ハウスのしつけ
避けたいのは、リードを引っ張って力づくでハウスの中に引きずりいれること。
そのいやな記憶がわんちゃんに残ってしまうと、ハウスに入ること=不快となり、逆に入らないようになってしまいます。
指示語は「ハウス」「入れ」「おうち」など家族でバラバラにならないように、統一して決めておきます。ハウスの所定の場所も明確になっていないとわんちゃんは混乱してしまいます。
方法としては、
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- わんちゃんをハウスに誘導する
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わんちゃんの好きなおやつやおもちゃを鼻先に近づけ、そのままわんちゃんをハウスに誘導、
ハウスに入ったらすぐにごほうびを与えます。
「この中に入るとごほうびがもらえる」とわんちゃんに学習させるためです。
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- ハウスに入ったら「ハウス」の指示語を聞かせる
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わんちゃんがハウスに入ったタイミングで「ハウス!」と言うと、「この中に入ることが“ハウス”」と学習していき、「ハウス」という行動と音声が結びついていきます。
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- 指示語だけでハウスを実行させる
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次のステップではごほうびを見せず「ハウス」の言葉だけでトライ。
自主的にハウスに入ったらすかさずほめてごほうびをあたえます。
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- ごほうびの回数を減らす
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「ハウス」の指示語だけでわんちゃんが行動できるようになったら、ごほうびをあたえる回数を徐々に減らしていき、ほめ言葉だけにします。
散歩のしつけ
散歩の時、わんちゃんのほうが先に行ってしまい、飼い主のほうがわんちゃんに散歩させられているようになっているというお悩みは少なくありません。
屋外には興味をそそられる物や音やニオイがいっーぱい。好奇心旺盛なわんちゃんは、興奮して早くその好きなところに行きたくてたまらず、リードを引っ張ってしまうのです。
わんちゃんの好きなようにさせるというのは愛情ではありません。かえって飼い主との信頼関係を築きにくくしますし、周囲に迷惑やわんちゃん自身の危険にもなります。散歩のコースは飼い主が決め、わんちゃんはそばについて歩くようにするのが鉄則。
でもそれがなかなかできないのですよね~。
対処法として次の3つのポイントがあります。
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- しつけの初期段階として、最初に散歩の前に思いっきり走らせる時間をとる。そして少し疲れてから散歩の練習を開始。
- 飼い主より先に出たら立ち止まる。飼い主が歩かないと進めないことをわんちゃんにわからせることが大事。
- わんちゃんがそばで歩いている間はほめつづける。先に出たら止まる。この繰り返しを続ける。
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そもそも散歩はなぜ必要なの?
散歩の目的は、運動と外界の刺激による脳などの活性化です。
ですから、適度な運動量、活動の質が確保できていれば、必ずしも散歩が必要というわけではありません。
小型犬で室内での運動が足りていれば、毎日行かなくてもよいですし、お天気が悪いのに絶対行かなくてはならないと義務感になってしまうと、わんちゃんも飼い主もストレスになります。散歩のリフレッシュという側面が阻害されてしまってはいけません。
散歩をどの程度行うかは、わんちゃんの体格や年令により異なりますが、
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- 小型犬で20~30分の散歩を2回
- 大型犬で30~60分を散歩を2回
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が、大体の目安です。
散歩を行う時間は決めない
散歩する時間を定刻に決めると、わんちゃんはその時間を覚えます。
時間がきたなと感じると、わんわんと吠えて、お散歩行きたいアピールをします。
いわゆるこれは、要求吠えと呼ばれる問題行動です。
あえて散歩の時間は特定せずにランダムにしておくことをおすすめします。
わんちゃんにもある相性
おとなしいわんちゃんは活発なわんちゃんが苦手な傾向があります。
小さいわんちゃんと育った大型のわんちゃんは、同じサイズのわんちゃんに馴染みがあり、外で小さいわんちゃんに会うと興味津々になります。
逆に過去にケンカをしたようなイヤな思い出のあるわんちゃんと似ていたりすると、避けることがあります。
このようにわんちゃんにも人間と同じ相性があります。
人間と違うのは、そのわんちゃんが持つニオイも相性の判断にしていることです。
わんちゃん同士だけでなく、わんちゃん対にゃんこにも相性があります。
仲良く同居できる場合もあるし、そうでない場合も。
小さい頃から一緒に暮らしているとお互い慣れがあり、仲良くできることは多いようです。
6つの指示
わんちゃんは飼い主の
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- 声
- 動作
- 表情
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をよく見ています。
しつけの指示は、この3つの表現を組み合わせて行っていきます。
わんちゃんは、言語の内容は理解できなくても、やさしいしぐさやきびしい口調は敏感に察知する能力には優れているのです。
①「おすわり」 |
わんちゃんのおしりを軽くおさえて「おすわり」をさせ完全に静止したら手を離します。
うまくいかない時は、頭上にわんちゃんの好きなおもちゃなどを見せて、少し後ろに動かします。見上げるような姿勢になるので自然と床におしりをつきます。その時「「おすわり」」と言いながら、床におしりがついた瞬間に、「よしよし」とたっぷりほめてごほうびをあげます。 |
②ふせ |
まず「おすわり」をさせて、わんちゃんの鼻先におやつをかざします。それをわんちゃんの前の方に移動させます。わんちゃんがつられて体を低くしていくと自然に「ふせ」の体勢になります。ふせの形になったら、ほめて、ごほうびを与えます。そのあとすぐに「ふせ」と言いながら同じ動作をくり返し記憶させます。
なかなかできない場合は、足の間など低い場所をくぐらせて必然的にふせの姿勢をとらせて誘導する方法もあります。 |
③まて |
わんちゃんと並んで立ち、「おすわり」をさせます。次に手のひらをわんちゃんの顔の前に向けて、「まて」と言いながらわんちゃんの正面へ。このときわんちゃんが動き出そうとしたら、もう一度「まて」と言いながら、手のひらを犬に向け動きを制止。じっとしていられたら、ほめてごほうび。動いたら後ずさりをしてわんちゃんから離れます。できたらだんだんまての時間を長くしていきます。 |
④おいで |
わんちゃんが何をしていても、飼い主から「おいで」と声がかかったら動作を中断して、すぐに飼い主の元に来るようになることが目標です。
腰を落としてごほうびなどで誘導し、やさしく「おいで」と声をかけて呼びます。そしてわんちゃんが駆け寄ってきたらほめます。屋内でできるようになったら屋外でリードをつけて練習します。 |
⑤だめ |
きびしい口調で短く「だめ」と言います。ふだんほめていると、飼い主のいつもとちがうきびしい口調に反応して禁止の意味を読み取ります。 |
⑥よしよし |
ほめる言葉です。やさしく首や肩をなでてやると喜びます。 |
わんちゃんが言うことを聞かない理由
それは、「わからない」からです。
理由として考えられるのは、お宅のわんちゃんの頭が悪いからではなく、しつけの合図が統一されていないからかもしれません。
たとえば、「「おすわり」」というしつけをさせるために、
「「おすわり」!」「「おすわり」だよっ!」
「シット!」「シットだってば!」
「すわれ!」「すわりなさいっ!」
といろいろ言い換えたりしていませんか?
わんちゃんは「すわれ」と「すわって」の表現のちがいは理解できません。あくまで、「すわれと言われた時に座ったらほめられた」という経験がもとになって「おすわり」ができるようになっていくのです。
ご自分は同じ言い方をしていても家族がバラバラではいけません。家族で合図の言葉は統一し、わかりやすいように、わんちゃんに向かって短く・はっきり・1回だけ言うのがポイントです。
どうしても言うことを聞かない時は?
わんちゃんにもタイプがあり反抗心の強い子もいます。もともとわがままな性格や臆病な気質を持っていると言うことを聞きにくい傾向にあるようです。
子犬を選ぶ時にこのような性格を見極めることも大事です。
叱ってもどうしても言うことを聞かなかった場合には、わんちゃんが興味のあるものを与え、
関心をそちらに向けます。関心が別のものに向かったらほめます。
反抗心の強いわんちゃんは、ほめられることが少なく、ほめられる喜びがうすい可能性があります。小さなことでもほめてあげて、飼い主との信頼関係を根気よく深めていきましょう。
無駄吠えしないわんちゃんになるには?
わんちゃんが吠えるのは本能ですが、人間社会でわんちゃんが一緒に暮らしていくには、必要のない時に吠えないようにしなければなりません。犬の鳴き声がうるさいとご近所トラブルになる前に、しつけを徹底しておくようにします。
わんちゃんが吠えるのは、かまってほしい・散歩に行きたい・遊びたいなどの何らかの欲求がある時、恐怖や不安、見知らぬものやトラウマに関連したものを見聞きした時、からだに痛みがある時、見慣れない動物が侵入して追い払うために威嚇として吠える時があります。
無駄吠えをしないようにするしつけのひとつの方法は、無関心です。
わんちゃんが吠えはじめたら心を鬼にして一切無視します。そして、吠えるのをやめておとなしくなった瞬間にほめてごほうびをします。
そうするとわんちゃんは、おとなしくしていればかまってもらえると学習して吠えなくなります。これも根気よく何度も行うことが必要です。
飛びつきしないわんちゃんになるには?
飼い主が家に帰ってきて、わんちゃんが大喜びで飛びついて出迎えてくれるのはうれしいものですが、お客さんにやるのは困ります。
飛びつかないしつけをするには、飛びつきしそうになった瞬間に、「「おすわり」」と言って静止させます。飼い主もしゃがんでからだをなでてあげるようにします。
うまく「おすわり」ができたらほめます。
それでも飛びつくようなら、短くきつくしかります。これを根気よく繰り返します。できれば、あまりジャンプ力がつかない子犬のうちにしつけるのがポイントです。
わんちゃんのしつけに関する疑問・質問
Q:「はしゃぐと興奮がおさまりません」
A:
わんちゃんは喜怒哀楽の感情を素直に表現します。人間のように寂しい時に寂しくないふりをしたり、悲しいのに無理に笑ったりはできません。
興奮している時は、あえて相手にしないのが得策。
わんちゃんが落ち着いたら相手になります。
すると、はしゃぐより落ち着いている方が遊んでもらえると思うようになります。
Q:「おもちゃをくわえて離さないのは?」
A:
おもちゃをくわえて離さなくなるのは、遊んでいるうちに楽しくてヒートアップしてきたからです。興奮が高まって手に負えなくなる前に飼い主のほうでコントロールします。
方法は、1回の遊び時間を短くし、5分遊んだら休憩、5分遊んだら休憩というようにクールダウンの時間をつくりましょう。
Q:「時々おもらししてしまうのはなぜ?」
A:
トイレのしつけは完了しているのに、粗相をしてしまう時はあります。考えられる原因は以下の通りです。
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- 高齢で括約筋がゆるくなっている
- 膀胱炎や排尿痛などの病気
- トイレの場所の移動による記憶違い
- 興奮して思わず失禁してしまう
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Q:「家族の食事時間に必ず吠えるのをやめさせたい」
A:
吠えるのは、吠えると食事をもらえると思っている可能性があります。
ですから、吠えていても無視します。
静かになったらほめます。静かにしたら早く食事がもらえるとわんちゃんに思わせます。
Q:「食事の時しか『まて』ができない」
A:
食事の時にはちゃんと『まて』ができるのに、ほかの状況でできないのは、食事以外のまては意味がないと思っているからです。まてをしたから、食事というごほうびをもらえると認識しているのです。
食事とは別の場面でまてができたら、ほめてあげる、または極少量のごほうびをあげるとよいでしょう。
Q:「お客さんが来ると吠えるのをやめさせたい」
A:
見知らぬ人に対して吠えるのは正常な行動です。
ですが吠え続けるのは迷惑になりますので、『ふせ』や『まて』の指示でおとなしくさせます。それでも吠える場合は、他の部屋に移すなどの対応をします。